2017年7月時点で、ハイイールド債券ファンドは日本で大人気です。
どの販売会社でも必ず取り扱いがあり、ほとんどの営業担当者は提案した経験があると思われます。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドのように運用資産残高が1兆円に迫るファンドも存在します。
1,000億円以上の残高のファンドはいくつもあります。
現在の組入れポートフォリオの条件は「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」を例に確認すると下記のような感じです。
- 最終利回り:6.5%
- デュレーション:3.4年
- 格付け:B
投信の信託報酬を控除するとコスト控除後の最終利回りは約5.0%といったところでしょうか。
やはり売れているだけあって魅力的な利回りです。
ただし、ここで忘れてはいけないのが2015年後半~2016年2月の動きです。
この時は原油価格が1バレル=100ドル以上から、1バレル=26ドルまで下落したことで、エネルギーセクターのデフォルト率上昇懸念からハイイールド債が10%以上の下落となりました。
今後もシェール革命による原油価格の下落リスクや米国の小売セクターの不調によりハイイールド債が調整する可能性もないとは言えません。
- 原油価格についての見通しはこちら:OPECが減産しても米国は増産 / 原油価格上昇は期待薄
- 米国小売セクターの状況についてはこちら:米国小売店舗の閉鎖拡大が金融市場に与える影響 / クレジット関連は注意が必要か
このような状況に備えて利回りをキープしたままリスクを分散させる必要がありますが、それに適した資産クラスがあります。
それは「米ドル建ての新興国債券」と「CoCo債」です。
まず、米ドル建ての新興国債券ですが多くの販売会社で取扱いはされていますが、いまのところハイイールド債ほどは売れていないと思います。
代表的な投信である「野村新興国債券投信(野村アセット)」の組入れポートフォリオの条件は下記の通りです。
- 最終利回り:5.1%
- デュレーション:6.2年
- 格付け:BB
格付けが上がる分だけ利回りは低下しますが、ハイイールド債の保有金額の一部を新興国債券にするだけでも分散効果は高まります。
次にCoCo債ですがこちらも投信の数は増えてきています。
代表的な投信である「ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略ファンド」の組入れポートフォリオの条件は下記の通りです。
- 最終利回り:6.6%
- デュレーション:4.6年
- 格付け:BBB−
CoCo債は格付けが高いにもかかわらず利回りが高いのは、多少流動性が低いことから流動性プレミアムが上乗せされていることと、新しい資産クラスのため機関投資家の参入がまだ少ないことが理由と考えられます。
「ハイイールド債」「米ドル建ての新興国債券」「CoCo債」はいずれもB格~BBB格の債券に対するクレジット投資という面では同じですが、クレジットの種類が全く別になるので分散効果は極めて高くなります。
ハイイールド債の投信のみを保有しているより、「ハイイールド債40%、新興国債券30%、CoCo債30%」のように分散した方が良いと思います。
この比率で投資した場合、上記の条件を使うと下記のようになります。
- 最終利回り:6.1%
- デュレーション:4.7年
- 格付けBB
「米ドル建ての新興国債券」「CoCo債」に分散することで、「ハイイールド債」の単品より利回りが0.4%下がり、デュレーションが1.3年長くなりますが、格付けはアップします。
また、「米ドル建ての新興国債券」「CoCo債」に分散することで、エネルギー関連(原油価格下落)や米国小売関連などの理由でマーケットが混乱した場合、下落リスクはかなり抑制されるはずです。
米ドル建てクレジット債券の投資をする際に、参考にしてください。