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機関投資家は円ヘッジ付きユーロ建て国債でキャリーを稼ぐ / 米国債より効率的だが注意も必要

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一部の機関投資家はキャリー収入を稼ぐために円ヘッジ付のユーロ建て国債を活用しているようです。

円ヘッジ付の米国債投資は従来から一般的ですが現在の金利環境を考えた場合、円ヘッジ付のユーロ建て国債の方が条件が良いようです。

まず、米国債をヘッジ付きで購入した場合の計算です。

  • 米国10年国債:2.32%
  • 3ヶ月ドルLIBOR:1.46%
  • 3ヶ月円LIBOR:−0.02%

ドル円の金利差によるヘッジコストは1.48% (実際には通貨の需給を表すベーシスコストも上乗せされるケースがあるが、ここでは単純化して金利差のみで説明します)

10年の米国債を購入して円ヘッジすると2.32%ー1.48%=0.84%の利回りとなります。

次にユーロ建ての国債をヘッジ付きで購入した場合の計算です。

ここでユーロ建ての国債は最も信用力の高いドイツ国債をはじめとしてフランス国債、イタリア国債、ギリシャ国債等幅広く存在する点がポイントとなります。

  • ドイツ10年国債:0.342%
  • フランス10年国債:0.675% (10月には一時0.9%程度まで上昇)
  • イタリア10年国債:1.784% (10月には一時2.2%程度まで上昇)
  • ギリシャ10年国債:5.365%

さらにユーロの短期金利は円よりも低いのでユーロを円ヘッジするとプレミアムとなります。

  • 3ヶ月EURIBOR:−0.329%
  • 3ヶ月円LIBOR:−0.02%
  • ユーロ・円ヘッジプレミアム:0.327%

現状では0.327%のヘッジプレミアムです。

ドイツ国債では利回りが低すぎますが、ユーロ圏でドイツに次いで信用力が高いフランス国債を購入して円ヘッジすると0.675%+0.327 = 1.002%となります。

さらにイタリア国債であれば1.784%+0327%=2.111 %まで利回りがアップします。

ギリシャ国債までいくと格付けもB-となり手をだしにくいですが、イタリア国債であればBBB格ですので、一時的に心配な局面も想定されますが利回りを取るために購入する投資家もいるでしょう。

下記に米国・日本・イタリアのイールドカーブを掲載します。

米国・日本・欧州のイールドカーブ(2017年11月)

イタリア国債のイールドカーブが最も立っています。(スティープニング)

期間が長いところのクーポンを受け取り、期間が短いところでヘッジするので利回りが残ります。

ただし、注意しなければならないのはユーロ圈も金融緩和の出口を模索しているということです。

近い将来に金利が上昇する可能性もそれなりにあると考えられます。

その場合、保有している10年債(長期債)は金利上昇による価格下落が発生します。

さらに為替ヘッジは3ヶ月LIBORなどの短期金利を使ってロールオーバーしていくのでユーロの金利が上がるとヘッジコストも上昇していくことになります。

そうなると債券価格の下落とヘッジコストの上昇でダブルパンチとなります。

場合によってはクーポンをヘッジコストが上回り、ネガティブキャリー(マイナス利回り)となることもあります。

よって、一見、ヘッジ付きのユーロ建て国債はおいしく見えますが注意が必要です。

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