証券業界(金融業界と言うべきかもしれないが)には「当たり前のように行われているが、冷静に考えるとおかしい」ということが多く存在します。
証券業界は健全性が担保されないと長期的な成長は実現できません。
欧米と比較して日本の証券業界が成長できていないのは、これまでの証券会社の営業姿勢に大きな問題があります。
こちらのページでは投資家に対する警笛の意味も込めて、問題のある取引を掲載しています。
投資家の方は下記のような提案があった場合は注意しましょう。
金融庁はこういう所を取り締まるべきだと思います。
IPOの配分は100%抽選にすべき / 利益供与にならないのか?
近年、IPO(新規公開)の件数が増加しています。
IPO銘柄は前評判が良い銘柄であれば大半が上昇します。
中には寄り付きから数倍になるような銘柄もあります。
もちろん、全てが儲かるわけではありませんが、IPO関連サイトで少し調べれば、損しそうな銘柄はすぐに見分けることができます。
ネット証券ではIPOを100%抽選にしている会社も多いようですが、対面の証券会社では顧客を選んで配分しています。(言い訳の為、ごく一部のみ抽選にしています)
しかも、新規公開の主幹事の多くはネット証券ではなく、大手の対面型総合証券です。
よって、国内のIPO銘柄の多くは恣意的に配分されていることになります。
普段、手数料を稼がせてくれる顧客や大口の見込み客などに配分されます。
これでは完全に利益供与です。
一般の投資家が提案されるIPOは「日本郵政・ゆうちよ銀行・かんぽ生命」や「ソフトバンク」など超大型のIPOのみです。
しかも、このような銘柄はたいてい損をします。
金融庁がこの状況を黙認する理由がよくわかりません。
ETFがあるのに手数料3%のアクティブファンドや手数料2.5%のインデックスファンドは問題ないのか!
昔と違って現在では、ほぼ全ての資産クラスでETFが存在します。
ETFは低コストで利便性も高いため、海外では急激に拡大していますが、日本ではそれほど広まっていません。
ニュース等でETFが拡大しているような報道がありますが、大部分は日銀のETF買いと機関投資家の現物株パッケージからETFへのシフトです。
個人投資家にはほとんど浸透していません。
個人的にはETFの存在を説明せずに、同じ投資対象の公募投信を販売することに大きな疑問を感じます。
もちろん、ETFで表現できないような商品性のものであれば問題ありません。
しかし、各証券会社の投信ラインナップを見渡すと、インデックス(指数)とほとんど同じようなアクティブファンドで3%の販売手数料をが掛かるものや、完全なインデックスファンドにも関わらず2.5%の販売手数料を取るような商品が多くあります。
例えば、運用残高が約1兆円で公募投信残高1位に君臨する「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(グロイン)」にも同じ資産クラスのETFが存在します。
「iシェアーズグローバル公益事業ETF(JXI)」というETFで、グロインとは非常に高い相関性です。
さらに、長期パフォーマンスではグロインよりETFの方が大きく上回っています。
- 「グロイン」と「iシェアーズグロ-バル公益事業ETF(JXI)」のパフォーマンス比較はこちらを参照:グロインが運用資産残高1位を目指す / パフォーマンス分析も掲載
そして、グロインでも販売会社によっては3%の販売手数料を徴収するところがあります。
多くのアクティブファンドでこのパターン(同じ資産クラスのETFがあり・パフォーマンスが劣後・高い手数料)が多くみられます。
また、インデックスファンドで2.5%の販売手数料という投信も存在します。
このようなファンドに限ってたくさん販売されており、残高が多くなっています。(下記リンク参照)
- 販売手数料2.5%の高コストインデックスファンドの代表例はこちら:ゆうちょ専用の高コストインデックスファンドは残高2000億円超
ETFよりパフォーマンスが悪いアクティブファンドに3%の販売手数料がかかることや、単純なインテックファンドに2.5%の販売手数料がかかることは、どう考えてもおかしいので投資家も注意する必要があります。
ノックアウト条項付きの仕組み債を繰り返し購入していると最後に大損する
EB債や日経リンク債でよくみられる光景です。
EB債や日経リンク債は株価が下落し、ノックイン価格にタッチすると損失が発生する商品です。
商品によっては一定以上(ノックアウト価格以上)まで株価が上昇すると、EB債や日経リンク債が償還するノックアウト条項が付与されているものがあります。
これは一見、早期に償還されるのでリスクが低いようにみえます。
しかし、償還した資金で再度、同じようなEB債や日経リンク債に再投資してしまうと、どんどんリスクが高くなります。
ノックアウト条項により償還するということは、株価が上昇しているということです。
これを繰り返していると、どこかで株価が急落し、一気に大きな損失が発生することになります。
年率12%のEB債でも3ヶ月で償還してしまっては3%しか儲かりません。
それを4回繰り返して初めて12%儲かります。
しかし、損をするときは一気に数十%の損が発生します。
過去の証券業界はその繰り返しでした。
これは繰り返し仕組債を購入してもらうことで証券会社が儲かる仕組みです。
仕組債の手数料が4%と仮定すると4回購入すると16%となり、投資家より証券会社の方が儲かってしまいます。
もちろん、株価がずっと右肩上がりであれば問題ありませんが、それならば普通に株式に投資した方が良いでしょう。
投資家の方はノックアウト条項(償還条項)がついている仕組債の再投資には注意しましょう。
- EB債についての詳細はこちらを参照:EB債(他社株転換社債)【仕組み・メリット・デメリット】
- 日経リンク債についての詳細はこちらを参照:日経225リンク債【仕組み・メリット・デメリット】
新興国債券の為替手数料は法外な料率の場合があるので注意
ブラジルレアル建て債券、トルコリラ建て債券、メキシコペソ建て債券など幅広い新興国債券が販売されていますが、その中で法外に高い為替手数料を徴収しているケースが散見されます。
例えばブラジルレアル建て債券を購入する際に、円→ブラジルレアルの為替手数料として1レアル当たり1.5円のコストがかかる証券会社があります。
現在、ブラジルレアルは1レアル=19円前後ですので、片道7.9%のコストとなります。
往復で15.8%です。
さらに債券でも2%~4%程度はコストがかかっています。
よって、トータルで20%近いコストとなります。
これでは投資家は儲かりません。
新興国通貨に投資する際は、為替コストの「手数料率」も必ずチェックしましょう。