自社株買いの効果
自社株買いは米国では昔から積極的に行う企業が多くありましたが、近年は日本企業でも一般的になっています。
よく「自社株買いに積極的な企業の株価は上昇しやすい」と言われます。
イメージ的にはそのように感じますが、実際にはどうなのか検証してみたいと思います。
その前に、自社株買いをすることによる具体的なメリット(効果)から説明します。
- 需給好転
- 株数・自己資本減少によりEPS・ROEの上昇
- アナウンスメント効果
実際に自己株式を市場で買い付けることで純粋に売買の需給が好転します。
また、発行済み株式数が減少することでEPS(1株当たり利益)が上昇し、自己資本が減少することでROEが上昇します。
そして、最もその会社のことを理解している会社自身が株を買うということは今の株価が割安であるということの裏付けとなり、プラスのアピールとなります。
- 自社株買いについての詳しい内容はこちらをご覧ください:自社株買いのポイントを分かりやすく解説 - ファイナンシャルスター
自社株買いに積極的な企業の株価を検証
では、実際に自社株買いに積極的な企業の株価がそうでない企業より上昇しているのかを確認してみます。
「自社株買いに積極的な企業の株価は上昇しやすい」ということを狙ったETFと投信がありましたのでこちらで確認します。
ETFは「SPDR S&P500 Buyback ETF(SPTB)」、投信は「ダイワ米国バイバック・ファンド」です。
「SPDR S&P500 Buyback ETF(SPTB)」は「S&P500 Buyback Index」にトラックするETFで、S&P500指数構成銘柄の中で過去1年の自社株買い比率(自社株買い金額/時価総額)が高い100銘柄で構成される指数です。
そして、「ダイワ米国バイバック・ファンド」は自社株買いに積極的な企業に投資し、大和投信が運用するアクティブファンドです。
それぞれ比較可能な期間でS&P500とのパフォーマンスを比較します。
ではまず、「SPDR S&P500 Buyback ETF(SPTB)」とS&P500との比較チャートです。
「SPDR S&P500 Buyback ETF(SPTB)」の設定日である2015年2月からの比較です。
次に「ダイワ米国バイバック・ファンド」とS&P500との比較チャートです。
「ダイワ米国バイバック・ファンド」の設定日である2014年3月からの比較です。
どちらもS&P500の方が上回っています。
あっさりと結果が出てしましましたが、自社株買い(buyback)に積極的な企業の株価は上昇しやすいわけではないようです。
おそらく米国株の場合、自社株買いに積極的な企業もそうでない企業も、長期に渡ってそれなりに上昇していたことから「自社株買い(buyback)に積極的な企業の株価は上昇しやすい」と言われたのだと思います。
自社株買いに積極的でない方が上昇しているとまでは言いませんが、上記の結果から必ずしも自社株買いに積極的な企業の方がより上昇するとは言えません。
ただし、名誉の為に掲載しておくと上記2ファンドは設定日からそれ程経過しないため、長期の比較ができません。
そのため、「SPDR S&P500 Buyback ETF(SPTB)」のベンチマークである「S&P500 Buyback Index」は長期のトラックレコードが取得可能であることから、S&P500との長期比較をしたところこのような形となりました。
2000年からの比較では「S&P500 Buyback Index」がS&P500を大きく上回っています。
これを見ると長期で見れば自社株買いに積極的な企業の株価はそうでない企業の株価より上昇しています。
もしかすると直近の5年程だけ調子が悪いだけかもしれません。
これも証券業界ではよくある話ですが、過去のトラックレコードでは抜群の成績であったため商品化すると、とたんにパフォーマンスが悪くなるケースは多くあります。
まさに上記のETFと投信も設定した直後、これまでと違う結果になっているようです。
本当に不思議です。
自社株買いの効果については今後、改善する可能性もあるので定期的に確認すると良いでしょう。