「投信は買ってはいけない」「投信で買っても良いのはこの10本」といったタイトルの本や雑誌でのコメントが最近やたらと多く目につきます。
中にはよく勉強していて経験も豊富な方もいらっしゃいますが、FP資格を取っただけで金融機関での勤務経験もなく、自身で運用をしたこともないような人がコメントしているケースも多くあります。
この手の方は言うことは概ねこのような感じです。
- 「普通の投信はコストが高いのでETFかインデックスファンドにすべき」
- 「リスク許容度に合わせポートフォリオを作成する分散投資を行うべき」
- 「長期投資をすればリスクは低くなる」
もちろん同じ投資対象でアクティブリターンが出ていないようなファンドはETFかインデックスファンドにすべきでしょう。
ただし、ETFやインデックスファンドでは買えない資産クラスや高いコストを払うだけの価値のある投信もそれなりにありますので、一概に投資信託がダメとは言い切れないと思います。
また、分散して長期投資をすればタイミングは考えなくても良いという考え方は、実際に自分のお金を運用したことがない方か、金融機関で資産運用アドバイスの仕事をしたことがない方しか考えられません。
以前も書いたことがありますが、日本人が運用で利益を上げることは米国人と比較すると格段に難しくなっています。
その最も大きな理由は為替の問題です。
米国は基軸通貨の米ドルで運用できます。
更に米ドルの金利水準は日本円の金利水準よりも高いため、無理に為替リスクをとる必要がありません。
また、米国株は米国政府とFRBの戦略の下、長期的に右肩上がりで上昇しています。
よって、アメリカ人は下記のような形で長期運用しておけばかなりの高パフォーマンスになります。
- 米国株20%・米国リート20%・米ドル建て投資適格債券40%・米ドル建てハイイールド債20%
実際、少なくとも過去30年間はかなり高いパフォーマンスとなっています。
日本の場合は金利水準が相対的に低いため、円建て債券では運用が難しく海外債券に投資する必要が発生します。
しかし、海外債券には為替リスクがあり円高になるとマイナスが発生します。
為替ヘッジをすると金利差分だけコストが発生しますので、米ドルも低金利の時は機能しますが、米ドル金利が上昇してくると機能しなくなります。
さらに日本株も為替の影響を受けやすい資産クラスですので、分散投資をしても大半が為替レートの影響を受けてしまいます。
よって、分散投資をしてもパフォーマンスは為替レート次第ということになります。
為替レートが安定していれば問題ありませんが、過去、リーマンショック後の円高局面などで分散投資をしていてもパフォーマンスが悪化したため、日本で「長期分散投資」は根付くことはありませんでした。
ここが米国などとは決定的に違うところです。
この点を理解せずに、米国の受け売りで低コストの長期分散投資といっても説得力がありません。
もちろんマーケットのタイミングを計ることは全てにおいて最も難しことでもありますので、一般の営業職員や投資家ができることといえば時間の分散しかないかもしれません。
いずれにしても言っていることがすべて間違っているわけではありませんが、安易に「投信は買ってはいけない」「投信で買っても良いのはこの10本」ということは少し違うような気がします。
最も重要なことは投資家が利益を上げられるようによく分析・研究をすることです。
そのためにはかなりレベルの高い知識も本来必要です。
最後にこれもいつも気になっているので書いておきますが、インフレ対策で物価連動国債を勧めている専門家も注意が必要です。(誰とは申し上げませんが、最近も雑誌・書籍でお勧めしている専門家?の方がいらっしゃいました)
おそらく商品性を正確に分かっておらず、イメージで勧めていると思われるのでこのような方は注意が必要でしょう。
- 物価連動国債の商品性はこちら:MHAM物価連動国債ファンド(未来予想)/物価連動国債の投資環境
専門家といっても千差万別ですので注意しましょう!