投信・ETF(債券型)

日本国債と円ヘッジ付き高格付け債券の投信をなぜ保有するのか

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「日本国債」と「世界の高格付け債券+円ヘッジ」を保有する目的は?

「日本国債に投資する投信」や「世界の高格付け債券に投資し為替は円ヘッジする投信」は多くの商品が存在します。

しかし、いろいろと考えてみたのですが、今のマーケット環境でこれらを保有する意味を見つけることができませんでした。

これらを保有している人は今後マーケットがどうなると想定しているのでしょうか?

分析してみたいと思います。

「日本国債に投資する投信」【ダイワ日本国債ファンド】

まず「日本国債に投資する投信」で運用残高が3300億円と最も大きいダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)のポートフォリオ概要を確認します。

  • 投資対象:日本国債
  • 最終利回り:0.1%
  • デュレーション:6.9年
  • 信託報酬:0.1944%

信託報酬控除後の最終利回りはマイナスとなります。

よって、このファンドで利益を上げるには長期国債の債券価格が上昇する必要があります。

つまり、長期金利が低下する必要があるということです。

現在、日本の10年国債利回りは0.08%前後です。

2016年に日銀がマイナス金利を導入した際、長期金利も-0.2%~-0.3%まで低下しましたが、金融機関の業績に悪影響が及ぶなどの理由で、その後イールドカーブコントロ-ルが導入されています。

イールドカーブコントロールによりイールドカーブをスティープ化(立たせる)させ、長期金利が低下しないようにしています。

よって、イールドカーブコントロールを行っている限り、長期金利がどんどん低下していくことは考えにくいと思われます。

長期金利が低下するには、日本経済がここからさらに大きく後退し、日銀が長短金利を共に下げてマイナスを深堀りする環境が必要です。

現在0.08%の10年国債利回りが、-0.1%、-0.2%、-0.3%と低下してくことが必要になります。

現時点で「日本国債に投資する投信」を保有すると、金利が横ばいならコスト控除後の最終利回り分だけややマイナスとなり、金利が上昇するとデュレーションの分だけ債券価格が下落しマイナスが大きくなります。

「世界の高格付け債券に投資+円ヘッジする投信」【世界公共インフラ債券投信(円コース)】

次に「世界の高格付け債券に投資し為替は円ヘッジする投信」で運用残高2700億円が最も大きい世界公共インフラ債券投信(円コース)のポートフォリオ概要を確認します。

  • 投資対象:公共インフラ企業が発行する債券に投資(円ヘッジ)
  • 平均格付け:A−
  • 最終利回り:1.88%
  • デュレーション:7.63年
  • 信託報酬:1.6504%

ポートフォリオに組み込まれている債券の通貨別の比率は、米ドル64%、ユーロ27%、ポンド7%です。

ユーロとポンドはほぼゼロ金利に近いのでヘッジコストがかかるのは米ドル部分です。

米ドルのヘッジコストは概ね1.5%程度でこれがポートフォリオの64%部分となるので、ポートフォリオ全体のヘッジコストは約1%程度となります。

よって、信託報酬とヘッジコストを合計すると2.65%となり、コスト控除後の最終利回りはマイナス(1.88%-2.65%=-0.77%)となります。

こちらの投信も利益を上げるためには債券価格が上昇する必要がります。

この投信の投資対象は上記の通り、米ドル・ユーロ・ポンドとなるので米国・ユーロ圈・英国の長期金利が低下する必要があります。

しかし、ご存じのとおり足元の状況は米国は利上げを開始し金融引き締めにシフトしています。

また、ユーロ圈や英国も金融緩和の出口をうかがっており、日本よりも早く金融緩和を解消すると見込まれています。

この投信が利益を上げるには米国・ユーロ圏・英国の景気回復が思ったように進まず、再度リセッションに向かうような場合となります。

こちらも現時点で「世界の高格付け債券に投資し為替は円ヘッジする投信」を保有すると、金利が横ばいならコスト控除後の最終利回り分だけややマイナスとなり、金利が上昇した場合はデュレーションの分だけ債券価格が下落し、マイナスが大きくなります。

最後にまとめると、下記のようになります。

「日本国債に投資する投信」と「世界の高格付け債券に投資し為替は円ヘッジする投信」に投資している人は日本や米国・ユーロ圈・英国の景気悪化を予想していることになります。

そう思っておらず何となく安心でいきるからという理由で保有している人は一度見直しましょう。

金利が上昇するとマイナスが拡大する点は注意が必要です。

もちろん、グローバルの景気が悪化し金利が低下すると思っている場合はそのまま保有しても良いでしょう。

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