2018年12月現在、米国の利上げ打ち止め観測が広がり、長期金利は2.9%まで低下しています。
米国の利上げがストップすると、これまで日米金利差拡大を材料に円安トレンドであったドル円レートが逆回転するのではないかと懸念する声も聞こえてきます。
しかし、現在の金利・インフレ環境であれば大きな円高にはならないと考えられます。
上記の通り、実質金利は相対的に米国が高くなっており、極端な円高になりにくい環境です。
今後、ドル円レートが円高トレンドになる可能性としては、日本の実質金利が上昇するケースが考えられます。
ただし、日本の名目金利(上記では3ヶ月LIBOR)が大きく上昇するとは考えられませんので、可能性があるとすればインフレ率が低下する場合ということになります。
引き続き、日銀は頑張って大規模金融緩和を行っています。
足元、懸念があるとすれば原油価格の下落です。
2018年10月以降、原油価格が急落し、1バレル=70ドル前後から50ドル前後まで下落しています。
原油価格の下落はインフレ率が低下する要因となります。
実際、1バレル=100ドル以上から25ドルまで下落した2015年~2016年頃はインフレ率がマイナスとなり、1ドル= 100円前後まで円高が進みました。
最も円高が進んだ2016年8月18日の金利・インフレ・実質金利はこちらです。
米国の実質金利が低下したことも要因ではありますが、大きく変化しているのは日本のインフレ率と実質金利です。
デフレによる実質金利の上昇が円高を招きました。
ちなみにこれは1ドル=76円まで円高が進んだ2012年1月も同じ状況でした。
この時は日本の実質金利がプラスであったことに加え、米国が高いインフレ率にもかかわらず大規模金融緩和を行ったことで実質金利が-2%以下まで低下し、大きな円高となりました。
- 2012年1月の実質金利についての詳細はこちら:為替レートの予想・分析は実質金利差・購買力平価を活用 - ファイナンシャルスター
日銀が大規模金融緩和を行っているので2012年のような円高になる可能性は低いですが、原油価格が更に下落すると2016年のように1ドル=100円前後まで行く可能性はあります。
逆にいうと、原油価格の下落以外に円高要因は見当たらないのでドル円レートの分析をする場合は原油価格に注目しておけばよいでしょう。
原油価格の下落は米国ハイイールド債の下落など、マーケット心理も悪化させるので、せめて1バレル=40~50ドル前後で推移してほしいものです。