大型の親子上場はマーケット時価総額の水増し
ソフトバンクG(9984)の国内通信子会社であるソフトバンクの新規株式公開(IPO)が決定しました。
想定時価総額は7.2兆円、最大で36.8%を売出し約2.6兆円の調達となります。
よって、今後もソフトバンクGがソフトバンクの株式を60%以上保有することになります。
せめて保有比率が50%未満まで低下するのであれば理解できる部分もありますが、これではソフトバンクGの資金繰りを助ける以外に社会的な意義はありません。
東証は親子上場について「一律に禁止しないが、必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない」という立場をとっているにもかかわらず、なぜこのような大規模な親子上場を認めたのか理解できません。
孫さんから「NTTはNTTドコモの株式を63.3%保有しているのになぜうちはダメなのか」と言われたのかもしれませんが。。。。
まさに今回の売出し上限である36.8%はNTTとNTTドコモの関係を目安にしていると思われます。
しかし、小型株の親子上場であればそれほど目立ちませんが、これだけ大型になるとかなり問題があります。
現在のソフトバンクG(9984)の時価総額は9.5兆円前後です。
この中にはすでにソフトバンクの7.2兆円の価値が含まれています。
ソフトバンクが上場するだけで株式市場の時価総額は7.2兆円増加することになります。
何も実態が変わらないのに東証の時価総額が7.2兆円も増加するのは違和感があります。
ちなみにタイトルで過去2番目と書きましたが、過去最悪の親子上場はNTT・NTTドコモではありません。
NTTはソフトバンクと同率2位です。
過去最悪の親子上場は「日本郵政」と「ゆうちよ銀行・かんぽ生命」の親子上場です。
これはいくらなんでも酷すぎました。
- 日本郵政とゆうちよ銀行・かんぽ生命の親子上場についてはこちらを参照してください:親子上場は時価総額の水増しを招くので禁止にするべき - ファイナンシャルスター
【参考】ソフトバンクIPOの評価について
現在の情報を列挙します。
- 2019年3月期予想当期利益4,200億円
- 配当性向:85%
- 想定株価:1,500円
- 半期配当:37.5円(年間75円)
7.2兆円の時価総額から単純計算すると予想PERは17.1倍です。
NTTドコモ:13.4倍、KDDI:9.3倍と比較すると割高です。
一方、配当利回りは5%でNTTドコモ:4.4%、KDDI:4.1%と比較すると好条件となっています。
普通に考えて国内の通信事業は売上・利益が大きく伸びることは期待できないと思います。
政府からの値下げ要請や人口の問題を考えると業績は若干低下する可能性があります。
ソフトバンクの利益拡大ストーリーとしては既に公表している「国内通信事業の人員を4割削減する」ことによる人件費削減による効果が考えられます。
これらを総合すると現状の利益水準で横ばいとなると思われます。
よって、現在想定している条件でいくと、5%の安定配当株ということになります。
あとはこれが5%で良いのかという部分が今後のブックビルディングにより評価されることになります。
個人的には5%ではあまり魅力が感じられません。
1350円位で決まれば5.55%ですが、少なくともこれくらいなら良いのではないかと思います。
マーケット環境にもよりますが、1500円だと少し厳しいと感じます。