リーマンショック以降、流動性があり為替リスクがない商品として円ヘッジ付きの外債投信が人気でした。
しかし、現状では金利・クレジット環境が変化し、円ヘッジ付きの外債投信は機能しない状況となっています。
円ヘッジ付きの外債投信とは具体的には下記のような債券に投資する投資信託で円ヘッジを付けたコースです。
- 米国ハイイールド債
- 優先証券
- 新興国国債
- CoCo債
リーマンショック後は上記債券のスプレッドがワイドニングして利回りが高いことに加え、米国FRBもゼロ金利政策を採用したことで円ヘッジコストがほぼゼロの状態でした。
例えば2010年頃の米国ハイイールド債を例に説明すると、米国ハイイールド債の最終利回りは8%前後でした。
米国のFFレートは0.25%で日本はゼロ金利ですので、ヘッジコストは0.3%程度です。
よって、投信で米国ハイイールド債投信の円ヘッジコースを購入した場合、信託報酬を1.5%と仮定するとコスト控除後の利回りは8%-1.5%-0.3%=6.2%でした。
期待リターンが6.2%で為替リスクがなく、流動性があるとなれば、債券価格が下落するリスクがあったとしても人気化したのは理解できます。
しかし、2017年9月現在の条件は米国ハイイールド債の最終利回りは5.5%前後で、FFレートは1.25%まで上昇しており、これにベーシスコストを加えたヘッジコストは1.5%前後と推測されます。
- 為替のヘッジコストについてはこちらに詳しく掲載しています:ヘッジコストは金利差とベーシス(ドル需要)で決まる 外債投資を阻む壁 米金利上昇 ドル調達コスト急拡大~日経新聞記事~ - ファイナンシャルスター
よって、現在、投信で米国ハイイールド債投信の円ヘッジコースを購入した場合のコスト控除後の利回りは5.5%-1.5%-1.5%=2.5%となります。
更に今後利上げが想定されており、ヘッジコストの上昇が予想されます。
数年前と比べて債券のスプレッドはタイトニング(縮小)し、逆にベース金利は上昇していることでヘッジ付き外債の条件が両面から悪くなる方向に変化しました。
米国ハイイールド債以外の債券も利回りは低下しており、2017年9月時点の利回りは下記の条件となっています。
- 米国ハイイールド債:5.5%
- 優先証券:3.7%
- 新興国国債:4.5%
- CoCo債:4.6%
ここから信託報酬とヘッジコスト合計で約3%引かれることになりますので条件的に厳しくなることが分かります。
よって、現在の金利・クレジット環境では円ヘッジ付き外債投信は見送るべきと考えます。
円ヘッジ付き外債投信がマッチするマーケット環境はリーマンショック後のようにクレジットがワイドニングした状況と米国の金融緩和が同時にくるようなタイミングです。
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