多くの証券会社で継続的に行っている個人向け国債のキャッシュバックキャンペーン。
詳しい内容は「個人向け国債 - ファイナンシャルスター」をご覧いただければと思いますが、要は財務省から証券会社が受け取る手数料(債券期間に応じて0.2%~0.4%)を顧客に渡すというものです。
証券会社ごとに少し異なるケースもありますが、3年債で0.2%、5年債で0.3%、10年債で0.4%のキャッシュバックが受取れます。
3年債はキャッシュバックキャンペーンの対象外としている会社も多いようですが、5年債と10年債はほぼ全ての証券会社で対象となっています。
国債の利回りは現在全ての期間で最低保証の0.05%となっています。
銀行で定期預金として預けても0.01%~0.02%程度です。
よって、キャッシュバックキャンペーンの0.2%~0.4%の利率がいかに魅力的かお分かりいただけると思います。
厳密にはキャッシュバックは総合課税になりますので所得が高い人は最高で55%の所得税・住民税がかかります。
それでも10年債を購入すれば0.4%×0.45 = 0.18%の手取りとなり、元本保証型の商品でこれだけ利回りが出る商品はなかなかありません。
よって、毎月何千億円もの発行ができるわけです。
個人向け国債の商品性をあまりご存じない方は、「でも10年資金が固定されて0.4%のキャッシュバックではそれほど魅力的ではない」とおっしゃるかもしれませんが、個人向け国債は購入から1年を経過すれば過去1年間に受け取った利金を返せば元金が戻ってくる仕組みとなっています。
更に円の金利水準が上昇していても債券価格の下落は発生しない仕組みです。
つまり、10年債と言っても実質的には1年で解約しても元本割れしません。
よって多くの投資家は1年で解約し国債の利金は当てにせず、キャッシュバックのみを受け取ることを目的としているようです。
10年債を1年保有すれば上記の通り、所得が高い最高税率の人でも0.18%の利回りとなります。
銀行預金の10倍以上ですから投資家から見た場合には夢のような商品で多くの資金が集まるのも分かります。
しかし、このスキームには多くの問題点があると感じます。
まず、財務省が証券会社に支払う手数料がそもそも高すぎると感じます。
10年債のクーポンは変動金利ですので固定金利の5年債で考えると、国が国債の保有者に支払う利金は5年間で0.05%×5年= 0.25%です。
これに対し証券会社に支払う手数料は0.3%です。
手数料も金利環境に合わせて変化する仕組みにすべきと感じます。
この手数料は結局、税金から支払われているのですから。
そして次に問題なのは、この手数料を全て顧客に渡して投資家を募っていることと、証券会社がタダ働きしてる点です。
本来0.05%の利回りでは誰も買ってくれないので、税金を使い上乗せ金利を支払うことで投資家を集めていることになります。
さらに直接、上乗せ金利は払えないので証券会社を経由して払っています。
これではマーケットを歪めていると言われても仕方がないのではないでしょうか?
さらに証券会社にとっては銀行からの資金シフトで預かり資産は増加しますが、1円の収益も生まないどころか、コストがかかる分マイナスです。
さらにこの手の資金は将来的に投信や外債などにはシフトせず、解約して出金するか、解約して再度キャンペーンを使って個人向け国債を購入するようです。
証券会社の営業マンとしてもこのような取引をしていても全く成長しませんので、志のある人はこのような提案をすることはやめた方が良いと思います。
国の借金も1000兆円を超えており、幅広い投資家に国債を買ってもらうことは大切かもしれませんが、そろそろキャッシュバックはやめるか、少なくとも手数料の水準とキャッシュバック比率を下げる必要はあると思います。