インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298)が投資口を取得・償却できるように運用規定を変更したことでJ-REIT初の自社株買いが行われるのではないかと報道されています。
J-REITの場合でも自社株買いの効果は基本的に株式と同様です。
純資産倍率(PBR)が1倍を下回っていいる状況で自社株買いを行えば、1株当たりの純資産(BPS)は増加します。
また、自社株買い後に株式を消却すれば1株当たりの配当金は増加します。
よって、株式でもそうですがPBRが1倍を下回る銘柄は理論的に自社株買いをすることは有効と言えます。
株式でいうところのPBRはJ-REITの場合、NAV倍率が使われます。
NAV(Net Aseet Value)は保有する不動産を鑑定価格で時価評価した上での純資産価格です。
J-REIT全体のNAV倍率は1.1倍と1年前の1.3倍から低下しており、1倍を下回る銘柄も20銘柄前後あります。
ただし、株式であれば迷うことなく自社株買いを行えば良いのですが、J-REITの場合は少し状況が異なります。
J-REITはある程度まとまった物件を購入する際は公募増資で資金調達し、借入と併せて購入します。
多くのJ-REITは資産規模の拡大(外部成長)を目指して運用しています。
実際、多くのJ-REITが公募増資を行っています。
中には毎年、公募増資を行っている銘柄もあります。
しかし、当たり前ですが、自社株買いをして、それほど時間が経たないうちに公募増資をすることは問題があると思います。
例えば10億円の自社株買いを行うことで投資口価格を上げておいて、その直後に100億円の公募増資を行うことはどう考えてもおかしいと思います。
よって、J-REITが自社株買いをするということは当面、公募増資は行わないということになり、公募増資を行わないということは外部成長はしないということになります。
J-REITの場合、利回りの高い物件を購入する外部成長なしには分配金の大幅な増加は見込めません。
よって、J-REITの自社株買いは短期的な上昇は期待できますが、中長期的な面からはクエスチョンマークがつきます。
もちろん自社株買いと内部成長によりNAV倍率が1倍を超えるような評価になり、その後、高くなった株価(投資口価格)を活用し、公募増資を行って再度、外部成長していくというシナリオも無くはないですが。。。
マーケットのショックなどで株価(投資囗価格)が大きく下落した場合は自社株買いが有効ですが、現在のように特にマーケット環境が悪くない時の自社株買いは外部成長をあきらめたととらえられるかもしれないので注意が必要です。
もしくは、その銘柄に何か固有の問題があるのではないかと思われる可能性もあります。
インベスコも自社のパイプラインから割安な物件をJ-REITに持ってくることができないのかもしれません。
この点には注意しましょう。
- J-REITに関する役立つ専門的な知識はこちらを参照してください:知識・ノウハウ(リート) - ファイナンシャルスター