米国と中国を中心に展開しそうな貿易戦争はマーケットのリスク要因として認識し始められていますが、中国民間企業の過剰債務問題もそろそろ意識しなければいけないかもしれません。
民間債務の合計がGDPの200%以上まで増加しており、日本のバブル期と同水準であることは以前から指摘されていました。
中国政府が過剰債務の抑制策を強化する中、マーケットでは政府が上手くコントロールして何とかソフトランディングするだろうといった楽観論が中心となっています。
しかし、具体的に見ていくと超大手のコングロマリット企業でもかなり資金ショートに苦しんでいる様子が伺えます。
海航集団(HNAグループ)はM&Aを繰り返した結果、負債が13兆円まで増加ししています。
多くの企業を傘下に持ち、ドイツ銀行やヒルトンの筆頭株主でもあります。
当局が民間企業向け融資の抑制をはじめて以降、資金繰りが急激にひっ迫し、2018年1月~6月までに株式や不動産を1.7兆円売却して資金ショートから逃れる計画です。
同社の発行している2019年12月24日償還の社債(クーポン7.6%)の価格は先月、90以下まで下落しました。
現在は95前後まで回復していますが利回りは10%を超える水準です。
先日、S&Pは同社が1年以内にデフォルトする確率を35%とコメントしました。
傘下の上場企業も2018年1月だけで7社が一時的に売買停止となりました。
かなり異常な事態です。
マーケットが堅調であれば資産売却も問題なくできるのでしょうが、足元はやや混乱していますので悪い方向に行くと、
「資産売却できず→資金ショート→銀行の不良債権問題発生→金融マーケットにショック」
ということも考えられます。
同じく超大手コングロマリットの大連万達集団(ワンダーグループ)も豪州の不動産、英国の不動産開発プロジェクトの権益の一部、傘下の映画運営会社を既に売却し、米国の不動産の買い手を探している状況とのことです。
大連万達集団の王会長は2016年には個人資産で中国1位となっていた人です。
こちらも1兆円規模の株式・不動産の売却計画を発表しています。
これは超大手のコングロマリットに限ったことではなく、中国企業全体に共通する問題のようです。
ここまで信用創造が逆回転(レバレッジが縮小)するとショックは防げても、景気やマーケットにはかなり逆風となりそうです。
中国企業の負債は多くが中国国内でファイナンスされているので、海外への直接的な影響はそれほど大きくないと思います。
ただし、中国は世界第2位の経済大国ですので、中国国内の景気悪化は幅広くグローバル経済にも影響すると考えられます。
特に日本・オーストラリアなどは相対的に影響が大きくなると思われるので注意が必要です。