ESG投資とは
近年、ESG投資が話題となっています。
巷では
- 「ESG投資は長期投資に向いている」
- 「ESG投資は安定した運用が期待できる」
- 「ESG投資はポートフォリオのパフォーマンスをアップさせる」
などESG投資の効果を宣伝する内容をよく見かけます。
また、ESG関連のETFなども続々と設定されています。
こちらのページでは実際にESG投資が一般的なインデックス投資より高いパフォーマンスをあげることができているのか検証してみたいと思います。
ちなみにESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。
もう少し具体的なテーマを上げると下記のようになります。
- E=環境:気候変動、水資源、生物多様性など
- S=社会:ダイバーシティ、サプライチェーンなど
- G=ガバナンス:取締役会の構成、少数株主保護など
ESG投資はこれらに配慮している企業を選別して投資していくものです。
根底にある考え方として環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮している企業は存在価値が高く、中長期的には業績面でも良くなるであろうというものです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も2017年からESG指数に連動する投資を開始し、順次、拡大しています。
2018年4月にESG投資について下記の記事を掲載しましたが、この時点では日本株と米国株のESG指数がTOPIXやS&P500を下回るパフォーマンスとなっており、ESG投資の優位性は確認できませんでした。
近年、パフォーマンスが改善しているとの話を聞いたので下記で検証していきたいと思います。
日米のESG指数のパフォーマンスを検証
まず最初に、GPIFの運用とは関係ありませんが、前回記事と同様、トラックレコードの長い米国株のESG指数とS&P500を比較します。
米国株ESG関連の代表的なETFである「iシェアーズMSCI米国ESGセレクトETF」(SUSA)とS&P500の比較チャートです。
いずれもトータルリターンのチャートです。
こちらは前回記事と変化はなく、ESG指数の優位性は確認できません。
過去1年・過去2年で見ても、パフォーマンスはS&P500指数とほとんど同じです。
また、長期比較では上記チャートの通りS&P500指数にアンダーパフォームします。
これを見るとESG投資は必ずしもパフォーマンスをアップさせるわけではないようです。
次に日本株のESG指数とTOPIXを比較します。
ちなみに現在、GPIFが採用しているESG指数は下記の5つです。
- MSCI日本株女性活躍指数(WIN)
- MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
- FTSE Blossom Japan Index
- S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数
- S&Pグローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数(除く日本)
①~④は投資対象が日本株、⑤は外国株となっています。
この中で④⑤は比較的新しく採用されたこともあり、④は最近ETFが設定され、外国株が投資対象の⑤は指数に連動するETFは設定されていません。
よって、こちらも前回記事同様に①②③に連動する下記3つのETFとTOPIXを比較します。
- ダイワ上場投信・MSCI日本株女性活躍指数(WIN)(1652)
- ダイワ上場投信・MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数(1653)
- ダイワ上場投信・FTSE Blossom Japan Index(1654)
こちらもチャートは全てトータルリターンで作成しています。
前回記事と比べるとかなり大きな変化があります。
前回は2017年9月~2018年3月の短い期間での比較でしたが、3つのETF全てがTOPIXを下回るパフォーマンスでした。
逆に今回の2017年9月~2020年1月の比較では全てのETFがTOPIXを上回るパフォーマンスとなっています。
凄い変化です。
上記のデータではESG投資の有効性がパフォーマンスから確認できました。
ただし、巨額の資金を投資するGPIFが投資を開始したことで、ESG関連銘柄を買い上げてしまっている可能があります。(個人的にはその可能性が高いと感じています)
その結果、上記のETFのパフォーマンスがよく見えている可能性もありますので注意が必要です。
ESG投資の効果が現れるまでには長い時間がかかります。
日本株のESG投資はトラックレコードもそれほど長くないので、ESG投資がリターンの上昇に寄与するか否かはもう少し推移を見守りたいと思います。
上記の米国のESG関連ETFも併せて考えると、少なくとも現時点ではESG投資がパフォーマンス向上に寄与するとは言えないと思います。