スルガ銀行が過去の決算資料において貸出金の内訳で「住宅ローン」と公表していた部分の大半が「投資用不動産融資」だったと報道されています。
スルガ銀行はリテール特化型モデルの戦略をとっており、法人向け融資はほとんどありません。
2017年3月期の決算資料をみると貸出金3.2兆円の内、個人向けが2.9兆円、法人向けが0.3兆円となっています。
また、2.9兆円の個人向け貸し出しの内、2.0兆円が「住宅ローン」とされています。
しかし、2018年9月7日に第三者委員会が公表した調査報告書では「投資用不動産融資」が1.9兆円でそれ以外がその他とされています。
つまり、同行の貸出の大部分が「投資用不動産融資」ということです。
同じく静岡を拠点とし、静岡県のNo1バンクである静岡銀行と比較して資産規模が半分以下にもかかわらず、利益水準では上回ることもあったのは金利の高い「投資用不動産融資」に注力した結果ということになります。
しかし、通常の「住宅ローン」とは違い、「投資用不動産融資」はデフォルト率もかなり高くなります。
さらにスルガ銀行の「投資用不動産融資」では多くの不正があったことから、よりリスクが高くなっていると考えられます。
ここで1つ不思議なのは、多くの証券会社のアナリストがスルガ銀行のレーティングや目標株価を公表していますが、何かおかしいと思う人がいなかったのかということです。
2017年3月期の決算説明資料では2.0.兆円の住宅ローンの平均金利が3.46%、2017年3月期に実行した住宅ローンの平均金利は3.91%となっています。
確かにそれくらいの金利で貸さないと580億円の経常利益を上げることはできません。
しかし、いまどき3%~4%で住宅ローンを借りる人がいますか?
どの銀行も住宅ローンに力を入れており、条件によっては1%未満で借りることもできますし、フラット35などの長期固定金利でも1%台です。
普通に決算説明資料をみれば分かると思いますが、アナリストの方々はどのように分析してレーティングや目標株価を公表していたのでしょうか。
数字を並べてバリュエーションの比較だけをしているのでしょうか。
もしかしたら、アナリストの方は所得が高いので住宅ローンとは無縁で、住宅ローンの金利水準を把握していないのでしょうか?
本当に不思議です。
今頃になって、慌ててレーティングや目標株価を下げていますが、それではアナリストの意味がありません。
一般的に株価の予想は簡単ではありませんが、今回のスルガ銀行の問題に関しては予想することは可能だったと思います。
もし、何年も前から売り推奨していたアナリストの方がいたら、その人はしっかりしていると思います。