不動産証券化協会が公表しているJリートのNAV倍率は2017年8月末で1.07倍と過去10年平均の1.08倍を下回る水準まで低下しています。
ちなみにNAV倍率とは株式のPBRのような指標です。
保有物件を鑑定価格で評価した場合の純資産価格に対してJ-REITがどれくらいまで買われているかを表す指標です。
J-REITのNAV倍率の直近のピークは2014年12月の1.57倍ですのでバリュエーション的にもかなり割安になってきました。
現在、J-REITの価格は8月末から更にもう一段下落しているので、NAV倍率も1.05倍程度まで低下しているはずです。
NAV倍率が低下した要因はJ-REITが下落したことだけではなく、鑑定価格が上昇していることも影響しています。
過去2年~3年はJ-REITが下落していますが、実物不動産市場はいまだゆるやかに上昇を続けています。
「NAV倍率=J-REIT価格 / 鑑定ベース純資産価格」ですので、分子が↓で分母が↑の状況です。
よって、NAV倍率が最も低下しやすいタイミングであったと言えます。
NAV倍率だけを見ればJ-REITは割安になってきたと言えますが、見方を変えるとJ-REITが不動産市況の低迷を先読みして動いているとも言えます。
リーマンショック前後は2007年5月にJ-REIT(東証リート指数)がピークを付けましたが、実物不動産の鑑定価格が下落しだのは2008年に入ってからでした。
この時も当初はJ-REITが下落して鑑定価格が上昇していましたのでNAV倍率は低下しました。
NAV倍率は2007年6月に約1.7倍まで上昇し、リーマンショック後の2008年10月頃には約0.5倍まで低下しましたが、NAV倍率が1.0倍程度になったのは2007年12月頃でした。
よって、この時を参考にすると現在のNAV倍率低下は不動産市況の低迷を先取りしていると言えます。
下記リンク先ではJ-REIT(東証REIT指数)と私募リートの価格比較を掲載していますのでご覧ください。
不動産の鑑定価格の推移については参考として私募リートのデータを活用できます。
私募リートは名前の通り、上場していないリートで価格の推移は鑑定価格ベースとなります。
せっかくですので私募リートについて解説すると、私募リートは近年、運用難の地銀を中心に人気があります。
地銀にとっては業務純益にカウントできる点と価格の変化が鑑定評価ベースであるためボラティリティが低い点がメリットになります。
一方、流動性が低く売りたいときに売れないリスクがあります。
つまり、実物不動産の投資にかなり近いイメージとなります。
そしてJ-REITのNAV倍率が高い時は鑑定価格で買える(つまりNAV倍率1倍で買える)私募リートの方が割安に投資できましたが、JリートもNAV倍率が1倍近くになるとこのメリットがなくなることになります。
話を戻すと個人的には不動産市況の低迷にならないことを願いたいですがマーケット的には少し注意が必要かもしれません。
J-REITと米国リートのNAV倍率の比較はこちら!