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原油価格上昇時のETFのパフォーマンス/頻繁に問題になる乖離には注意!

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【こちらのページでは原油価格のリバウンド局面で問題になりやすい「原油ETFと原油スポット価格の乖離」について紹介していますので参考にしてください。特に「WisdomTree WTI Crude Oil ETF(ドル建て)」と「WTI原油スポット価格(ドル建て)」の比較チャートは必見です。】

原油ETFは先物のロールオーバー(乗り換え)に問題がある

2020年4月、先物価格が一時マイナスになるなど原油価格は波乱含みの展開となっています。

原油価格にはスポット価格と先物価格があります。

通常時はほぼ同価格で推移しますが、今回のように先物の限月期日が来る際などに若干の乖離が生じるケースがあります。

それでも最終的には同価格に収れんしていきます。

そして、原油への投資で問題になるのがETF(投信)です。

原油は現物に投資することは不可能ですので、原油ETF(投信)は先物に投資することになります。

先物は期限に応じて5月限・6月限・7月限・・・と複数の限月が取引されています。

一般的なETFは最も流動性が高い直近〜数ヶ月後の限月に投資しており、徐々にロールオーバー(乗り換え)します。

そして、この先物のロールオーバー(乗り換え)に大きな問題があります。

例えば、5月限・6月限・7月限の先物価格がすべて同じ価格であれば問題は起こりません。

しかし、通常は期限が先の先物の価格が高くなります。

この状態をコンタンゴと呼んでいます。

原油カーブ、コンタンゴ

そのため、5月限(第1限月)から6月限(第2限月)にロールオーバー(乗り換え)する際、安い価格の先物を売却し、高い価格の先物を買い付けするというオペレーションが発生します。

例えば5月限から6月限にロールオーバー(乗り換え)する際、5月限が20ドル、6月限が22ドルとすると10%もロスが出ることになります。

原油価格自体の評価は変わっていないのに、ETFが保有する先物の単価が20ドルから22ドルに上昇することになります。

もちろん、ETFの投資家が10%儲かるわけではありません。

儲かるわけではないのに保有している原油先物の評価が上がることになります。

結果としてロールオーバー(乗り換え)の差額はコストと同じような形となります。

例えば、原油先物が1バレル=20ドルの時にETFを購入した投資家が、ロールオーバー後の1バレル=21ドルの時にETFを売却した場合、売却時の先物の簿価は22ドルになっているので、1ドル(5%)儲かるかと思いきや、逆に1ドルマイナスになってしまいます。

このロールオーバーによるコストは大きい時もあればそれほど影響がない時もあります。

コンタンゴのカーブが急な時(期先の先物がより高い時)にロールオーバーのコストが大きくなります。

マーケット環境としては原油価格が大きく下落して将来の先高観が出てきたときなどに発生しやすくなります。

ちなみに前回原油価格が大きく下落しだのは2014年7月~2016年2月で、1バレル=100ドル以上から30ドル未満まで下落しました。

その後、リバウンドし2018年6月には74ドルまで上昇しました。

下記のチャートはこのリバウンド局面で原油ETFがどのようなパフォーマンスになったを表しています。

WTI原油ETFとWTIスポット原油の比較チャート

ロンドン上場の「WisdomTree WTI Crude Oil ETF(ドル建て)」と「WTI原油スポット価格(ドル建て)」の比較チャートです。

ちなみに「WisdomTree WTI Crude Oil ETF【CRUD】」は東証上場の「WisdomTree WTI原油上場投信【1690】」と中身は同じです。

下記チャートは原油価格が1バレル=30ドル以下まで下落した2016年2月5日を100として指数化しています。

原油ETFと原油スポット価格の乖離

2016年2月5日~2018年6月29日の週次データでは原油スポット価格は2.4倍になっていますが、原油ETFは1.6倍です。

ETFだから上がらないわけではないのですが、これくらい乖離します。

2016年2月5日~2016年5月27日の4ヶ月間でも原油スポット価格が60%上昇したのに対し、原油ETFは30%の上昇です。

短期でもこれくらい乖離します。

この現象は原油価格がリバウンドする局面でほぼ毎回発生し、問題になります。

一般の投資家のみならず、金融機関の職員でも理解していない人が多いので注意してください。

原油ETFに投資する際は必ず認識しておきましょう。

乖離することを理解した上でそれを許容できるのであれば投資しても問題ありませんが。。。。

原油ETFの乖離についてはこちらも参考にしてください。

また、下記ではWTI原油先物の各限月の価格推移とETFの価格推移を比較しています。

上記でも紹介した通り、ETFは直近限月に投資しているとは限りません。

ETFがどの限月を保有しているか具体例を挙げて紹介していますので参考にしてください。

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